チェット・ベイカーと麻薬

これまた版画ネタを探索中に目についた部分を。

ジャズ100年史

ジャズ100年史

チェット・ベイカー語る

僕を写したこういう初期[50年代]の写真を見ると…(略)モダンだ、かっこいいよ、映画スターかもな。いい男だよ。
 たぶん、中には僕がやってると思ってる人がいるだろう…麻薬とかいろいろさ。でも、初期のこの頃はキレイなもんだよ…何も知らなかった。バードのところで演奏してた頃は、そう彼とツアーをやってたんだ。すごく保護者的でね。まるで兄貴さ、父親的でさえあったよ。麻薬のことはいつも僕に警告し続けてた、自分みたいになっちゃいけないんだって言ってね。僕に近づいてくる奴がいると、本当に怒り狂ったよ。ある時なんか、殺さんばかりだった。
(略)
でも、さっき言ったように、当時僕は潔白だった。僕がこの病的な魅惑に手を染めたのはディック(リチャード・ツワージク)の死後のことさ。いいかい、ツワージクの家族は息子の死に関して、個人的に僕を責めたんだ。僕に責任があるって言って。僕が彼の面倒を見るべきだったんだって。僕は彼がそんなに重症だったなんて思っていなかった。僕自身もすごく若かったし、いろんな感情を経験しつつあるところだったんだ。
(略)
皆が僕を責めた。あれはひどい重荷だった。彼の死には物凄い罪悪感を感じて、本当に立ち直れなかった。その後すぐ、いろんな麻薬をやるようになって…病的な魅惑が重なり、しまいには自分自身に試さなくちゃ気がすまなくなった。それが皆自己破壊につながったのか、現実の事実なのかどうか、僕には習慣性の付きやすい面もあったし…本当に理解できたなんてことはないんだろうな。

ジミー・スミス語る

ちょっと待て!カウント・ベイシーはオルガン・プレイヤーじゃない。ちょっとその気になっただけだ。サン・ラはダメだ、撃ち殺しちまえば良かった。ビリー・プレストンは教会のオルガン奏者さ。他のものを弾いてるとこなんか見たことねぇよ。大抵の奴は両手で弾くだけだ、ほら。でも下の方にはこういうペダルがズラッと付いてるんだ。どうしてロック・プレイヤー達はこういうペダルで弾かないのか?それはペダル操作も覚えられないほど怠け者なのさ。だから俺達よりも金儲けが上手いんだ。俺はオルガンの演奏ではエキスパートだし、くそったれな金儲けなんかは出来ない。誰が好きかって?ファッツ・ウォーラーさ。
(略)
自分の生徒達は皆、好きだね。――ドン・パターソン、ジャック・マクダフ、グルーブ・ホルムズ、シャーリー・スコットラリー・ヤング、ジョージ・フェイム。皆ジミー・スミスを弾いてるよ、いや、本当だぜ。フレディ・ローチジミー・スミスのコピーさ。でも、彼はクリシェを何とかしようとはしてるけどね。ジョン・パットンは立派なオルガン奏者さ、並のな、ダイナマイトってわけじゃない。彼等は俺の代役さ。
 教える時は、彼等の足をペダルに置いて俺は床に座るんだ。シャーリー・スコットを教えた時は……シャーリーは裾の短いドレスを着てたから「シャーリー、膝を閉じろ。開きっ放しじゃ教えらんないぜ。」って言ったね。それ以来彼女は長いドレスを着て演奏するようになったのさ。

セロニアス・モンク

国際的に著名になってから、あるコロンビア大学の講師が彼に向こう見ずなお願いをした。「あなたのプレイする、そのちょっと奇妙なコードをクラスでも弾いてくれませんか?」モンクは鋭くそして簡潔に答えた。「ちょっと奇妙なというのはどういうことなんだい?僕がプレイしてるのは完璧に理論的なコードだよ。」