70年代の早川義夫と松本隆

新譜ジャーナル・ベストセレクション’70s

新譜ジャーナル・ベストセレクション’70s

早川義夫のかたわなる音楽論・第二回(1970)。

だいたいアマチュアであるなんていうのはおかしいのであって、めしが食えても食えなくてもプロでなければいけない。時間や金に制限されるのは当り前で、それはいつもいつも悪条件に決まっているんだから、理由にならない。貴方はその中で真剣なものを出していかなければいけないだろう。商品というのは、買手が飛びつくようなステキなものでなければならないんだ。
 こんなものでどうでしょうか、という態度をなくすこと。自分で満足してないんだったら、出しても無理に決まっている。貴方にとって満足するものだったら、きっと他者に通じるものだ。貴方にとって自己満足の歌をつくればいい。だって、自己満足なんていうのはめったに出きはしないんだから。
(略)
やる前から話し込むのはよしましょう。終ってからも話し込むのはよしましょう。私達は何ひとつ終っていない。そんな話はもっと事務的でいい。事務的になれないことはいくらでもあるんだ。犠牲になってはいけない。きがねしてはいけない。つまらぬところから早く去ってゆこう。もう頭でっかちになるのはごめんだ。わかりあおうとしてくっつくのはもう古い。見ようとするには散らなければ駄目なのだ。ひとりでできない者が、どうしてみんなでできる!

第13回(1971)

 商品というのは、みんなが飛びつくような、ステキなものでなければならないんだ。
 作り手は、本気で作品を作り上げたか。売り手は、本気でそれをいいと思って、売り歩いたか。もし、そうでなければ、買い手が飛びつくような商品なぞ、決して生まれてくるはずはないだろう。
(略)
 病気をなおすことが目的なのではなく、問題は、その医者を信じるか信じないかの問題であり、知識を得るためだけに教師につくのではなく、その教師を信じられるか信じられないかが先であり、金のためにその会社に行っているのではなく、その会社及び社長を信じるか信じないかの問題である。
 その上で、金をふんだくったりふんだくられたりするのが望ましいのであって、いいとも悪いとも思わずモクモクと品物や金が動くのは、まるでゆうれいだ。

松本隆による「風街ろまん」解説(1972)

(街角の電柱あたりで、内緒話のような風が立ち止まってるのが、きみにも見えるかい)
(略)
(風街とは失なわれた街なのだ)
(風街とは風景の塗りつぶされてしまった下絵なのだ)
(略)
(朝、とびきり冷い水で顔を洗い、箪笥のひきだしを開けると中は雪景色だったりするのだから、ぼくの頭の中に、街のひとつ位、構築されてたとしても、たいしたことじゃないんだよ)
 きみは風が、まだ「やさしさ」を匂わせながら、ぼくらの頬のあたりでくるくると渦巻いていた時分のことを思い出してくれればいい。
(略)
 だからはっぴいえんどはラブ・ソングを歌うのだ。それも、とびきり透明な、そして風のように素速い奴を。それは世界に対する「やさしさ」の乱反射だ。すみきった空の青さを渡る風だ。
(略)
だからぼくらだけが知ってる「風街」に行こうと思うのだよ。
 あの旧い、やさしい街に向う、雪の銀河をまっしぐらに切り裂く、あの冬の機関車に乗って。

タレント情報欄(1973)

はっぴいえんど、今キャラメル・ママのリーダー・細野晴臣氏。現在真っ赤なフォルクス・ワーゲンにのっていますが、これ何と20万円で買ったとか。

ロックの風雲児 CRAZY CHAR(1976)

最初のスタジオの仕事がエリック・クラプトンのコピーの仕事。クラプトンとまったく同じに弾いてくれっていわれまして。
(略)
それにしても、ベンチャーズの“キャラバン”というのは難しいね、ただ譜面通りの音を取るというのではなくね。

ユーミン松本隆対談(1977)

自分の一つの築いた時代を持ちつつ、時代の流れに逆らえなくて、妥協している部分があって……、そういう人の方が好きなわけ。(略)で、松本さんって、私そういう人だと思うのね。

売れなかったことが「はっぴいえんど」の最大の欠点という松本に、でも売れようと思ってなかったでしょうとユーミン

ユーミン あの、売れようと考えることが、すごく、ふとどきな事だって感じがあったじゃない?
松本 だから有名になろうって、そういう欲望は、まったくないわけ。
結局、なんていうかな……、裸の自分がいて、目の前に70年代の時代があった気がする。で、あとにはなにもないんだよね。

歌謡界というシステム

ユーミン (略)ある一部の作家だけが自分をプロテクトするために悪循環でレコード会社なりなんなりが全部その作家をプロテクトする側にまわっちゃってさ、結局それが主流になっちゃうみたいのってあるじゃない。それで流れができちゃうみたいな。
(略)
松本 いや、本当に完璧にシフトを組んでいるよ。たとえば阿久悠には日本テレビ音楽出版が付いていて、歌手になる人間ていうのは「スター誕生」という番組があって、いくらでも予備軍があって日本テレビの歌番がある。
 そうすると作家とか、そういうもんじゃないんだね。一つの企業としてさ……。

胎内回帰願望

[絵具箱がよくでるのは何故という話になり]
松本 僕は油絵より水彩が好きなんだ。にごっているより、透きとおっている方が。
ユーミン 前になんかで、ちらっと読んだんだけど、ガラス越しに絵を描くみたいだという……。
松本 一つには自分がへだたりたいのね。壁だと、なんにも見えないしかといって、オープンだと不安な気がする。そうすると、ガラスなり1枚へだてた方が、その風景自体が絵になる気がして。
(略)
[それは病人の発想だ、いや胎内願望なんですという話に]
松本 ガラスというのは、オープンエアーの胎内願望をかなえてくれる。(略)
さもなければ、街全体が一つの個室みたいな型。
(略)
自分がおぼえている街[昔の青山]はないわけだから、いまの青山をガラス越しに見る……それが風街ろまんになる。

3rd前のくすぶってるRCインタビューとかパンタ自身による頭脳警察3rd解説とかその他諸々もあったが省略。
エス「こわれもの」評が激w。

今まで3枚出しているのに、何故かパッとしないこのグループ、でも最近はあの煩雑さが何となく一本のシンを持ってきてなかなかいいようだ。(略)