ジョン・レノンに恋して

ビートルズ・青春篇 - 本と奇妙な煙に収録されていたシンシア・レノン本が面白かったので読もうとしたら入手不可状態、でも新たな自伝が出た。その違いはミミとヨーコの悪口全開なとこ。先だってポールと別れた方とは違いシンシアは世間が思うほどには慰謝料もらってなくて養育費もジョン&ヨーコのサインが毎月必要な状態、そんなわけで前回の自伝ではヨーコの悪口は書けなかった、でも今度はズバリ書くわよ。

ジョン・レノンに恋して

ジョン・レノンに恋して

 

いきなりジュリアンが序文で、僕たち母子はジョンの人生の端役扱いだった、だが時は来た、今こそ歴史を真実に近付けるのだ宣言。

シンシアによるミミおばさんの真実

嫁姑的関係にあったミミに対してもかなり鬱憤たまってるシンシア。ジョンの死後も11年生きたミミは、母に捨てられたジョンを引き取り、厳しくも愛情を持って育てジョンの成功を陰で支えたというイメージを世間に広めたが実態はそうじゃないと厳しく告発。
子供のいないミミは、ソーシャルサービスから裁判所まで動員して無理矢理ジュリアからジョンを取り上げたのだと。

[隣にリバプール市長も住んでいたという広い庭のあるすてきな家]
おばさんの物腰は、高貴でさえある。リバプール訛りのかけらもない話し方をするので、ジョンはおばさんへの反抗心から、わざと労働者階級のリバプール訛りを身につけたのではないかと思った。最初の段階で、ミミおばさんは階級というものに、ことさらこだわる人だということがわかった。中産階級でありながら上流階級志向がある人で、おばさんの決まり文句のひとつが、「庶民の」だ。

対立から逃げるジョン。ジョンを傷つけるミミ。

[ミミとジョンがシンシアの家を訪問した時、不良のジョンとのつきあいを内心案ずるシンシア母に]
わたしがジョンの勉強の妨げになっていると批判し(略)あっという間にふたりは口論になり(略)
ジョンは席を立って家を飛び出し、わたしはあとを追った。通りを全力で走ってジョンに追いつくと、ジョンが泣いているのがわかった。(略)
 ジョンは争いごとや対立というものに耐えられなかった。ジョンはそういう状況に陥ると、必ず逃げた。(略)
 このときの出来事のおかげで、ジョンとミミおばさんの関係もよくわかった。(略)
そのあと何度もミミおばさんがジョンやジョンが大事にしている人を否定するようなことを言って、ジョンを怒らせるのを目撃することになる。そんなときジョンは腹を立て、恥ずかしさでいたたまれなくなって、その場から逃げ出してしまうのだ。

ジェラス・ガイ

シンシアに話しかける男すべてに喧嘩を売る「ジェラス・ガイ」。親友スチュとダンスしても激怒、女子トイレまでついてきて平手打ち。てなことばかり書いていると悪口ばかりと思われそうなので青春全開の文章を

 外は夕暮れになっていて、通りは静かだった。パブを出るとすぐ、ジョンはわたしにキスしてきた。長くて情熱的な、とろけてしまいそうなキスを。そして、友だちのスチュアートが部屋を空けてくれるから、そこに行こうとささやくと、ジョンはわたしの手を取り、駆けだした。幸せだった。ほんとうに幸せだった。ジョンが横にいることが、そしてジョンもわたしと同じ気持ちだということが。あのとき、ジョンとならどこにでも行ってしまっただろう。

ジョニー&ムーンドッグス期

ジョンという人は、グループの成功を熱望する一方で、気が散りやすく、ある考えや計画からいつの間にか別のものにくるりと方向転換してしまうところもある。常に自分の気持ちを、成功をつかむことだけに集中させておくために、ジョンにはポールの推進力と決断力が必要だった。

ハンブルクからの手紙

ジョンはほとんど毎日手紙を書いてくれた。手紙は10ページにもわたる長さで、キスと漫画と愛を誓う言葉で埋め尽くされている。封筒にまで詩や、キスや、「郵便屋さん、郵便屋さん、のんびりするな。ぼくはシンに恋してる。だから早く、お願いだ、早く届けてくれ」というメッセージが書かれていた。ジョンからの手紙は情熱的で、みだらでもあった。わたしのことを思って「ぼくのが、デカく固くなって、脈打ってる」という箇所では、顔を赤らめてしまった。

ピート・ベスト解雇

ピートのことがみんなの神経にさわるようになってきていた。ピートがなにか悪いことをしたわけではない。いい人だし、ドラマーとしての腕もいい。ただ、ほかのメンバーと性格が合わないのだ。みんながひっきりなしにふざけあっているときに、仲間に入らずにひとりでいるほうがいいというタイプで、みんなにからかわれても、ときにはかなり酷なからかわれ方をしても、ピートには通じていないことがほとんどだった。あまりにおっとりしていて、なにごとにも動じないのだ。
(略)
ほかのメンバーは、自分たちといっしょに笑えて、生意気なまでのユーモアのセンスを共有できる仲間を求めていたのだ。

卑怯なジョン

[ピートが好きだったブライアンは解雇したくなかった]
 ブライアンはピートに悪い知らせを伝えなければならないことにとても心を痛め、ピートのためにほかのバンドを探して紹介しようともちかけた。ピートは二週間家に閉じこもったきり、だれとも顔をあわせることができず、それまで友だちだと信じていたメンバーがなぜ自分を棄てたのか、理解できなくて苦しんでいた。残酷な仕打ちだった。
(略)
[メンバー誰一人ピートに謝罪しなかった、一番親しかった]
ジョンがピートを避けたことは、ことさらピートを傷つけただろうと思う。わたしはジョンに、ピートに会って話をするべきだと何度も言ったのだけれど、ジョンはいつものように、自分に都合の悪いことに正面から向きあおうとはしなかった。ジョンはピートが怒るだろうと、口論は避けたいと思ったのだ。いちばん卑怯なのはジョンだった。

『バック・ビート』に異議あり

(シンシアだけじゃなく、ポールの扱いも結構酷かったけどネ)

 ジョンの人生について評論する人たちの多くは、もしもわたしが妊娠していなかったら、ジョンはわたしとなど決して結婚するはずがなかったと言い続けてきた。映画『バック・ビート』のなかで、わたしはスカーフをかぶってジョンにすがりつき、頭の弱いどうでもいいガールフレンドとして描かれている。当然、大間違いだ。事実からかけ離れているにもほどがある。だいいち、わたしはスカーフなどかぶったことはない。

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青春の光景

少なくとも離婚までの前半部分は、成功までのジョンの青春を追体験させてくれてありがとうと言いたくなる幸福感に満ちていて、ジョンに対する悪口も駄目なとこがまた愛しいといったカンジ。

ほかのみんなが教室を出て、わたしも帰るしたくをしていたときのことだ。ジョンは1メートルくらい離れたところに、ギターを抱えて座っていた。そして「エイント・シー・スウィート」を演奏しだしたのだ。(略)
[なんてかわいいコなんだという歌詞だから](略)
 わたしは顔が真赤になって、さも用事があるように先に帰るとだけ告げて、曲が終わる前にその場から逃げて来てしまった。でもジョンがどんな目をしていたか、わたしはちゃんと知っていた。歌っているあいだ中、視線はわたしにしっかりとすえられていたから。

大音量でかかるチャック・ベリーのナンバーに合わせて踊っているとき、ジョンが音楽に負けないように大声で言った。「ぼくとつきあわない?」
 わたしはあまりにも面食らって、口から勝手にとんでもない言葉が出てしまった。「ごめんなさい。ホイレイクに婚約者がいるのよ」。その瞬間、このまま地面がわたしを飲み込んでくれればいいのにと願ったくらいだ。きっと、高慢で、つんとしたように聞こえたに違いない。
 「結婚してくれなんて、言ったかよ」
 ジョンはそう切り返してきた。

列車に飛び乗る前に、なんとかあわただしくさよならのキスをした。わたしが窓から手を振ると、「明日の予定は?次の日は?その次の日は?」とジョンが叫んだ。
「あなたに会うのよ」。わたしも叫び返した。

わたしは何時間も座ってジョンの代わりにレタリングの課題をしたのに(その横でジョンとスチュワートは冗談を飛ばしたり、ときどきわたしの肩越しに仕上がり具合をのぞいたりしていた)、それでもジョンを救うには、力が足りなかった。
[ジョンは落第して退学]

次回に続く。

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