連載中にやろうと思ってやらなかったのか別のとこでやったのかわからないけど、なんだかやったことがある気がしてならないが、ともかくココではやってないみたいなのでやってみることに。ゴモットモDEATHと言うしかない「勝ち組」本が釈然としない気分にさせるのとはちがい、広務の場合はなんというか実にしみじみした気持になります。ヴィジョンもなくエゲツないが人にやさしい広務、ステキやん。
- 作者:魚住 昭
- 発売日: 2004/06/29
- メディア: 単行本
広務が差別の中からのしあがっていく過程も実に面白いのだが引用して面白いというものでもなく、そういうわけでのしあがってからの一番面白エピソード。
ソーカに睨みをきかせた手口
聖教グラフには、池田と外国要人などとの会見場面を撮った写真がたびたび掲載された。
「写真のバックには学会施設にあるルノワールとかマチスとかいった有名画家の高価な絵が写っているんですが、野中さんがそれを創刊号から全部調べ上げて、学会が届け出ている資産リストと突き合わせた。その結果、届出のない絵がいろいろあることが分かったというのです。もちろん野中さんは直接そんなことを学会に言ってくるわけではない。何となく耳に入るので、秋谷会長は『野中は怖い、怖い』としきりに漏らすようになったんです。
静穏保持法のために合流断念
1988年に成立した静穏保持法は、国会周辺と外国公館および政党事務所周辺での拡声器使用を規制する法律である。(略)
自民党が静穏保持法を成立させたのは、公明党を消費税法案の審議に協力させるためだった。(略)
静穏保持法が制定されて以来、それまで学会本部や池田の私邸周辺でしばしば行われていた右翼の街宣活動はピタリと止んだ。本部も私邸も「政党事務所」である公明党本部の周辺規制区域内にあるからだ。
政党事務所の法律上の要件は「衆議院議員または参議院議員が所属する」ことである。もし、公明が新進党に全面合流してしまえば、信濃町から「政党事務所」が消え、再び池田は右翼の街宣カーに悩まされることになる。岡本が言う。
「静穏保特法は矢野委員長時代に制定されたんですが、その後の公明党執行部の世代交代などでこの法律の具体的な中身を知る政治家がほとんどいなくなった。公明から国会議員がいなくなれば、池田先生を守る静穏保持法というガードレールがなくなってしまうことに気づかなかった。そのために新進党との全面合流の話が進んでいたのですが、自民党のなかにこの法律の意味を知る人間が一人だけいた。それが野中さんだったんです」
もう公明党はいらないと大作
平野貞夫はそう前置きして新進党崩壊のいきさつを語りだした。
「そもそも新進党をなぜつくったかというと、これに公明党が協力したのは池田名誉会長の意思なんです。人を出してカネ使って政党を作って、これだけ悪く言われるのは合わないと。政治が信教の自由というのを理解したから、もう公明党は要らない、創価大を出た者が自民党からも新進党からも国会議員になる、それでいいんだという彼の判断があったんです。政党を特ってることが面倒くさいという部分もあったんでしょう」
小渕の哀れな田舎芝居
[密会した橋本は加藤と山拓に三役を確約し協力要請。ここに小渕派・宮沢派・渡辺派が結束]
ただ、一つだけ厄介な問題が残っていた。小渕会長の小渕恵三が(略)橋本擁立に難色を示していたことだ。
(略)
野中は加藤に言った。
「小渕が子どもみたいなことを言って騒ぎ立てるんで、橋本擁立も苦労しますよ。しかし小渕は黙らせなきゃいかんと思ってます」
(略)
[会談から数日後、軽井沢で]
「後で僕の部屋にきてくれないか」
小渕が加藤に声をかけた。
加藤が夜、小渕の部屋を訪ねると、小渕はいきなり上着を脱いでステテコ姿になった。
「あんたもくつろいでくれ」
加藤は言われるままに上着を脱いだ。小渕は一転して真剣な面もちになり、
「実はこれは歴史的な会談だ」
と切り出し、一息おいて続けた。
「私は橋本君を総理にしてやる決心をした。ついては協力してくれ」
加藤は唖然とした。小渕は橋本から何も知らされていないのだ。すでにその話はホテル西洋銀座での橋本との会談で合意済みだった。
だが、自分の口からそれを言うわけにはいかない。加藤は黙って小渕の話に耳を煩けた。
「協力してもらった場合には、あなたの身分については私が全責任を負います。それは男として約束する」
加藤を幹事長にしてやるというのである。しかし、それもすでに橋本が加藤に約束していた。
おそらく小渕は野中らの説得を受けて「ここは橋本や加藤に恩を売っておいたほうが得策だ」と考えを変えたのだろう。小渕の方針転換は遅きに失したのだが、 「わかりました。すべてお任せします」
加藤はそう言って、そそくさと部屋を出た。
[当然加藤にすれば小渕に何の借りもない、四年後の総裁選に出馬、恩を着せたつもりの小渕から徹底報復を受けることに]