kingfish.hatenablog.com
てなことから普段小説を読んでないと他と比較ができないので、一応図書館に置いてある文芸誌はイントロ部分をチェックするようにしてたのですが、小説を読まない人間に「読める」(くどいが単純に読めるという意味)のはあんまりない。
某音響批評家は脇坂綾『青い玉』を小説内小説だと低評価なのだが、そいつが小説外小説だとして高評価しているものは全く「読めない」。小説読まない奴が読めなきゃ小説外小説じゃねえと思うが。確かに脇坂は小説内小説だろう、書こうとしていることもたいしたことじゃない、でもその話を聴こうという気にさせるところがヨイわけ。
で、群像4月号の小林エリカ「ノース・ショア」は読めた。余白の多いサブカル?少女マンガを小説にしたカンジで、プロフィール見たらマンガ家でもあった。納得。「読める」のはサブカルだからじゃないかと言われそうだが、なんというか、ただそれだけじゃないように思えて。
しつこいが素晴らしい小説というのではなく、「読める」だけ。このままオ洒落サブ軽に流れるのか、スゴイところへ行くのか、よくわからない。気になったので旧著をチェックすることに。
- 作者: 小林エリカ
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どこかに落ちてゆく爆弾は、まだ見ぬ愛する誰かを殺すのでしょう。ならば私は、日本の東京にいて、不確実な空爆や戦争のニュースに踊らされながら、この場所で、爆弾になろう。誰かどこかの男のところへと落ちてゆく爆弾です(至って大迷惑なお話ですが)。それで、場所と共に記憶するの。夢を記録するの。
ただ、その時に、セックスはしないよ。
戦争するなら、セックスしません。
みんな何かを「する」ということばかり言うけれど、何かを「する」ではなくて、積極的に何かを「しない」ことではだめなのかしら。
何かをすることは難しいけれど、何かをしないということなら、できるような気がする。
せめて突撃ゴハン方式で見知らぬ御宅訪問玄関脇の産経新聞の束を横目に趣旨を話して「非国民」呼ばわりされて叩き出されて……とかさあ、反戦の志はないけど生まれてこの方セックスレスの男子宅を筆下し空爆とかさあ、もう少し体をはってほしいよ。だってさあ小林エリカのルックスがさあ
ブログだと
著者紹介インタビュー(→
これだよ。
好みは色々だからアレだけど、不快ではないと思うw。セックス抜きで泊めて下さいと来られたらイヤではないと思う。これが「針千本ハルナ」とかだったら成立するだろうか。醜女がやって成立する企画だろうか。レイプしなさそうな無難な男を選んで悶々とさせつつ御宿泊ですよ。悶々としたくない人はお嬢様のお遊びを成立させるため他で宿泊とか、別室とか、徹夜で仕事をするふりとかして、逃亡するわけだが、そうできない男は悶々である。宴人の「惚れてまうやろ〜」コントの世界である。「惚れてまうやろー、反戦企画とかいって、風呂上りでシャンプーの匂いさせた女が隣に寝てたら、添い寝とかされたら、惚れてまうやろー」。
宴人コント
https://vision.ameba.jp/watch.do?movie=168645
自分の魅力を心得ていて男をなめてかかっているのである。私くらいの女だったら、一緒に泊まってもらえるだけでも有難いでしょうって調子だ。ゆるい。ゆるすぎるぜ。それで反戦。
誕生日なのに行くところもないエリカのためにケーキまで用意して泊めてくれるF君の好意に甘えてズルズルと六連泊するエリカ。
当たり前のように吉祥寺F君宅に帰宅。23時着。
家主、さすがに、私が毎日やってくることに気まずくなったのか、24時、「ちょっと、角砂糖買いにいってくる」(こんな時間にそんなもん売ってるわけないじゃん!)と言って、外出。
(略)
やっぱり、気まずく、なかなか眠れず。
家主は、無意味に、「……ごめん」を連発。
ニセ同棲生活4目目。私、調子に乗ってF君宅に居座る。F君、嫌な顔一つせず薔薇茶を淹れてくれた。まじ惚れる。
家主入浴後、私も入浴、そして就寝。
眠ろうとした時、家主に、また「……ごめん」と言われた。
私が冷たく「何が?」と言ったら、また、「……ごめん」と謝られた。
ニセ同棲生活5目目。
家主、もう、「ごめん」は言わないらしい。
F君、ごめんネ。
再度、Mさん宅
また、見合い状態にどきどきする。家主はまた、どきどきする、と連呼するため、わたしもまた、どきどきする。
添い寝している最中、Mさんに4度も「……ごめん」と謝られた。
謝られる理由は全くない。最近、私は、謝られてばっかりだ。
何がですかと問い詰めた後、私、明解な答えを得られぬまま、就寝。
家主には、「蛇の生殺しだ」と言われて、最後にまた、「……ごめん」と言われた。
寝ている間に、胸を触られたような、触られてないような、触られたような。しかし、眠かったのでよく覚えていない、ので、無罪放免(って、冤罪か?)。
(略)
なんだか、私が家主を虐めている気がした。
Mさん、ごめんネ。
再度、Yさん宅。エリカ、最大のピンチなのか。
父であるメンヘル教授小林司はどんな気持で読んだのだろう。
今日は添い寝とのこと。
「どちら側に寝ましょうか」と私。
いつもどおりの質問。私は家主の指定どおりの場所に寝る。家主の返答を待つ。
家主、花柄の枕と茶色のストライプのクッションを右に置いたり左に置いたり。悩んでいる様子。
どうしたのかと思いきや、
壁側に寝かせる→襲い掛かったときに逃げられない→流し側なら逃げられる→どちら側を指定するか?→もしやオレの危険度が試されているのか?→この女計算高い
という判断をしていたのだと家主。そこで、私を外側に寝せることを決めたらしい。
全く予想外の見当に私、寧ろ、仰天する。
そんなに先の手までシミュレーションするだなんて。
もしや、これまで添い寝した男たちも、そんなこと真剣に考えていたのか?
(略)
背後から抱き枕。家主、この抱き方は100点満点中何点か、と脚を絡ませつつ問い掛けてくる。私、答えに窮する。反対向きに寝返り、抱き枕されつつ、うとうとする。「コバヤシサンはクリスマスどうでした?」。ぎゅっと抱かれる。みんな、私のことを「コバヤシサン」と苗字で呼びながら腕枕する。これまでの二人もそうだった。不思議な気分だ。
家主の鼻を首筋に感じつつ、うつらうつらする。眠りそうになったとき、一瞬だけ唇にキスされる。私、眠っていたにもかかわらず、反射神経抜群。無意識のうちに飛びのく。家主笑って、トイレヘ。私、内心動揺。でも、眠い。家主、廊下のトイレからすぐに戻ってくる。
家主、「もう、普通に寝る」宣言。背中を向ける。「でも、寂しいなあ。寂しいなあ」と、家主。
じゃあ、いいです。腕枕でも、抱き枕でも、と、私。
結局、抱き枕。私の脚の上に、家主の脚。家主の腕は長くて、私の身体の周りをぐるりと一周。
私うとうとしながら、チュウはダメ……。チュウはダメ……。と繰り返しつつ、うつらうつらと、5時就寝。
だいたいさあ、ツライ、泊まるところがないと言ってるけど、学校とか祖父宅(反則じゃねえ)とかにやたら泊まってるし。
開始二ヵ月半あたりでこう愚痴る。
それにしても、なんで、私、ウチヘ帰れないんだろう。
地下鉄の暗い窓の外側を眺めながら、ぼんやりと考えごと。
それにしても、こう、ずっとセックスをしないでいると、寧ろセックスしていたことのほうが不思議に思えてきて、もう、私、一生、セックスができなくなってしまっているのではないかしら、と思えてくる。クリスマス、やはり、みんなはセックス、するのでしょうか。
あとがき
これまでの134日間、私は、一度もウチヘ帰らず(お父さんお母さん、おねえちゃん、ごめんネ)、一度も誰ともセックスもせず(もう、セックスできなくなってるかも!)、他人の男のウチで眠り、夢を見て、過ごしてきました。
銭湯に行けるようになったことがそんなに自慢か、エリカ。一度貧乏したほうがいいぞ、エリカ。セリカにはのったかエリカ。ペリカをフェリカにためたかエリカ。
三ヶ月ちょいセックスしないことがそんなに大変なことか、エリカ。そんなことを言ってるとロビイじゃなくて、猫猫先生が「来る、きっと来る」(←これは「ノース・ショア」にでてきて笑った箇所)ぞ。
うわあ、結局、貶してるよなあ、これじゃ。そういうつもりではなかったのだが、とりあえず、小説は次回作もチェックするつもり。