ビートルズ・青春篇

ビートルズ関連の色んな文章を集めた本から青春ネタを主に。

ビートルズ世界証言集

ビートルズ世界証言集

ジョンは、ビール臭い息を吐きながら、すぐ近くのアラートンから自転車に乗ってきたポール・マッカートニーと初めて顔を合わせた。

[シンシア・レノン著書より]
ジョン母のボーイフレンドの留守宅に勝手に入り込んでジャムったり飲み食いしたりする三人に付き合わされるシンシア。陰でジョージに「歯が馬っぽい」と言われちゃうシンシア。

貧乏カップルと背伸びするポールとジョージ。

私たちは映画を観るのが大好きだった。そしてそこには、少なくとも数時間、身体を寄せ合ってあたため合えるという、このうえなく幸せな特典があった。贅沢に映画を観るわけにはいかない場合、地元のチャイニーズ・コーヒー・バーによく出かけた。私たちは一杯のコーヒーで二時間居すわるカップルとしてすっかり有名になった。店の経営者は、貧乏な学生の実情を理解しているように思えた。
(略)
[ジョンが]明らかに中流階級の家庭や環境にいながら、寄る辺のないテディボーイのような格好をする動機や理由を知りたいと思った。(略)
ジョージとポールは、そのころカレッジの学食にたびたびまぎれこんでいた。ジョージは十六歳というあどけなさ、ポールが十七歳、ジョンが十八歳、そして私が十九歳だった。本当に幼かった。
ポールは精一杯カレッジの学生を装った。彼は、大嫌いな学校の制服を隠すように、ボタンを首までとめてコートを着ていた。そして、校則で認められるぎりぎりの長さまで髪を伸ばし、大きな情熱的な目で学食をうらやましげに見回し、高校を卒業し、自分自身の道を切り開くことができる日を心待ちにしていた。

童貞ジョージの坊やぶりがなんとも。

[二人がラブラブしてると]
背後から耳をつんざくような口笛や叫び声が聞こえ、一気に現実の世界に引き戻された。それはジョージにほかならなかった。「やあ、ジョン、やあ、シン」彼は私たちに急いで追いつき、そのあとは「ふたりでどこへ行くんだい?一緒に行ってもいい?」というパターンになった。私たちは、このだぶだぶの制服を着た男の子を追い払うほど思いやりのない人間ではなかった。彼はまだ、真剣にガールフレンドとつきあう段階にきていなかった。そして、恋愛がどういうものなのか何もわかっていなかった。
そこで私たちは、いったいこの顔ぶれで何をすればいいんだろうと思いながら、愉快な三人組として、その失われた午後を過ごした。

[1977年頃のジョージのインタビュー]

十歳に見えるチビだった。

バンドを始めたばかりのころは、僕はまだ学生で、すごくチビだったんだ。ハンブルクに行ったあたりから身長が伸び始めた。(略)
ジョンは、僕とポールが通う学校の隣にあったアート・カレッジの学生だったんだ。ジョンのところのほうが少しだけ自由な校風で、僕たちは学校を抜け出して、そこにもぐりこんだ。僕たちの学校はまだ制服だったし、それにジョンのところではタバコを吸ったりすることもできたからね。僕はすごくチビだったから、僕が来るのがジョンはちょっと恥ずかしかったんじゃないかな。せいぜい十歳くらいの子どもにしか見えなかったからね。

 ---音楽面でハンブルク時代を懐かしく思うことはありますか
演奏しているだけで楽しかった。そのことは懐かしく思うよ。レコードを出して、あちこちをツアーで回り始めてからも、あのころのことを引きずっているところが少しあった。(略)
 ---ジョンが、ビートルズの音楽は、まだレコードを出していないころが最高だったと言っていましたが。
(略)ライブ演奏に限定するなら、昔のほうがよかったというジョンの意見に賛成だ。僕たちは本当にすごかった。心の底から、楽しんでいた。

エプスタイン証言

私は、レザーにジーンズ・スタイルの若者のグループが、午後になるとたびたび店に現われ、フロアをうろつき、女の子に話しかけ、カウンターに寄りかかってレコードを聴くことを多少わずらわしく感じていた。愛想はよかったが、だらしがなく、少し奔放な若者で、髪の長さも気になった。(略)
私は知らなかったが、その四人の若者がビートルズだった。ランチタイムのセッションを終えた彼らは、ひときわ人気を呼ぶ夜のショーまでの長い午後のひとときを私の店で過ごしていた。

ピート・ベスト証言

[エプスタインと契約]
僕たちは六ペンスの収入印紙の女王の頭部にかけて名前を走り書きした。ジョン・ウィンストン・レノン(略)、ジェイムズ・ポール・マッカートニー、ピーター・ランドルフ・べスト(略)、そして単にジョージ・ハリスンと。僕の知るかぎり、ジョージはミドル・ネームに触れたことがなかった。
だが、契約書には空欄が一箇所あった。その書類にもっとも重要な署名、ブライアンの名前が見当たらなかった。それでも彼は、自伝で語った。「私はその合意を守ったし、誰も不安を感じていなかった」たしかにその日は誰も気にしていなかったが、その後僕たちは危惧した。ブライアンは何らかの理由で、おそらくとてつもなくまずい事態になり、彼が責任を負う場合を考えて、署名するのを恐れたのだろうかと思った。

ビートルズにはそのころ、シュプレヒコールのようなものがあった。ジョンが先頭に立って、「みんなの目標は?」と大声でうながすと、僕たちが「ポッパーモストのトッパーモスト(ポップスの頂点の頂点!)」と叫び返したものだった。

僕たちにとって重要な意義を持つことになる曲は、ジョージの到着を待つあいだに生まれた。その曲は、クラブの向かい側のフラットで、午後のうちにできあがったレノン=マッカートニーの共作だった。最初は〈ラヴ、ラヴ・ミー・ドゥ〉というタイトルがつけられていたが、すぐに頭の“ラヴ”が省略された。
僕たちは、初日に先立ち二日間クラブでリハーサルを行なったときに、その曲に初めて取り組んだ。だがなぜか、しっくりこないサウンドだった。そこで、アレンジの仕方についてみんなで話し合った結果、何かが足りないことがわかった。ジョンは、ブルース・チャンネルのハーモニカをフィーチャーしたヒット曲〈ヘイ!ベイビー〉の影響を受けていた。彼は、ハーモニカで〈ラヴ・ミー・ドゥ〉の新しいイントロをいじり始め、ついにブルースふうの音色に答えを見つけた。それが、人の心をとらえる哀愁を添えた。依然としてスチュアートの死に茫然としていた僕たちにとって、それは共感できるサウンドだった。

『偉大なる楽曲の命』という本より

一九六三年二月十一日月曜日、ビートルズは、アビイ・ロード・スタジオでファースト・アルバムのほぼ全曲を吹き込むという十二時間におよぶセッションの大詰めを迎えていた。ジョン・レノンは、打ち合わせどおり、ラスト・ナンバーのファースト・テイクをとる前に、上半身、裸になる。
彼は一気にミルクを飲み干し、ピアノの上のガラス瓶からズーブスのコフ・ドロップをひと粒取り出して喉を癒し、ピータースタイベサントで一服、アイズレー・ブラサーズのヒットで知られている曲のイントロに入る。彼が声を発する。“Well shake it up baby,twist and shout”ジョンは、しわがれた野性的な声を振り絞るが、子音の部分で舌が回らない。最後から二番めのブリッジ、“aaah,aaaahh,aaaaahhh,aaaaaahhhh"という例のハーモニーを乗り切るまで、彼は絶叫している。ジョージ・マーティンは、彼を説得し、セカンド・テイクをとろうとするが、彼の声はもう出ない。そしてファースト・テイクがレコードに収録される。

ラバー・ソウル

今では、ジョンが〈イン・マイ・ライフ〉を月曜日にバンド仲間に聴かせ、火曜日にオフをとり、水曜日にポールが〈恋を抱きしめよう〉を持ってきたということもわかっている。ジョンはそれからウェイブリッジの自宅へ戻り、翌日の午後、〈ひとりぼっちのあいつ〉を携えて現れる。ジョンがバッグのなかから〈ノーウェジアン・ウッド〉を引っ張り出せば、ポールの答えは、粋でウィットに富み、独白の流儀で皮肉をいっぱいに込めた〈ドライヴ・マイ・カー〉だった。

問題の「キリスト発言」インタビュー

ウェイブリッジの地域社会には既婚者のビートルズが三人いて、森の多い丘と株式仲買人に囲まれて往んでいる。彼らはクリスマス以降仕事をしておらず、その暮らしは隠遁者のようで、奇妙に時間が止まっている。
(略)
彼がかけていたインド音楽はジョージから教わったものだ。(略)
「これはすごいよな、とてもクールだよ。君にはこのインド人たちがクールに思えない? ちゃんと聴いている? この音楽はできてから三千年たっているんだぜ。それなのにイギリス人が向こうでインド人に指図しているんだから、笑っちゃうよな。ほんとにすごいよ」それから彼はテレビのスイッチを入れた。
(略)
キリスト教の精神は滅びるよ」と彼は言った。「消えて、しぼんでいく。それについては議論の必要を僕は感じない。僕は正しい。それはいずれ証明されるだろう。今じゃ僕たちのほうがキリストより人気があるんだ。ロックンロールか、キリスト教精神か、どちらが先に滅びるかはわからないけれどね。キリストはいいんだ。だけど、彼の弟子たちがバカで並以下の人間なんだよ。僕に言わせれば彼らがキリスト教をねじ曲げて台無しにしてしまったのさ」

マリアンヌ・フェイスフルの証言

あの週末はとてもショックを受けたから、マハリシのことはあまり覚えていないわ。ブライアン・エプスタインが死んだという知らせが届いたのがそのときだったの。ビートルズがどれだけ途方に暮れ、どれだけ悲しみに引き裂かれたか、痛ましいのひと言だった。悲しさと苦しさとで、彼らは親しい家族のようにひとつになっていたわ。

明日もこの本から「ジョンと戦争」ネタ。
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