押井守と矢作俊彦の戦争

Cut (カット) 2006年 12月号 [雑誌]

Cut (カット) 2006年 12月号 [雑誌]

押井守インタビュー、図書館で飛ばし読みして引っ掛ったとこ。
高校で落ちこぼれた押井守の妄想

―「ビューティフル・ドリーマー」を作ることになったら、やっぱりその自分の持っている現実に対する不信感なり喪失感なりを、どうしても取り上げたいと。
「そこにしか自分が信じられるものがなかったから、で、高校の時のことを思い出したの。高校の時に考えてたのは、電車に乗って学校に行くのも嫌でさ、山手線を3周も4周もするわけ、その間ずっと東京が廃墟になったら自分ひとり何をするか、っていう妄想してるんだよね、そういうことをずーっと考えてるわけ、だからネタは苦労しなかったもん。それをやっただけで」

押井守の戦争のイメージ。

東京を瓦礫の山に変えるってことが僕の戦争のイメージじゃないんだよ。僕が高校生の時に思い描いてた東京の戦争っていうイメージは、交差点に戦車が駐車してるとかさ、日常が継続してる一方で戦争が街にぐいぐい露出してくるあの快感なんだね。それやりたかったんだ。戦闘というよりは日常が侵食されてくるっていうさ、その怖さとか快感の部分、それが戦争だって思っている

渋谷陽一による考察「押井守にとって犬とは」

−僕が考える押井守にとっての犬っていうのは、要するに自分が「犬になれない」、っていうのが最大のポイントではないかと思うんだよ。犬は飼い主の存在によって初めて「わたくし」というものを持つわけでしょう。自らよりも他者が必要であるという、犬になるっていうのはつまり自我の無私化だよ。そういうものに押井守は異常に弱いんだよ、だからそういうものになりたいし、それができない自分がいるわけだよね、押井守はそれと延々戦ってるんだよ、現実と非現実の問題もそうだし、他者と自分という問題もそうなんだけれども、それの理想型がすでに現実に犬としてあるわけだよ。
「もしかしたら、若い頃にね、信仰心をついに持てなかったっていうかさ、そういうふうな感じはあるんだよ、だから資質としてはあるような気がする。僕は、実はいつも思うんだけど、犬に踏んづけられたりするのが大好きでさ。(略)

「攻殼機動隊」、最初は「新たな街」をテーマにするつもりだったが、体ブチブチ場面で「自分の体を客体視する快感」に気付く

どうやって収まりのいいアクション映画にしつつ、新たな、街を描くかということだった。僕は依然として街だと思ってたの。今度は現実の街じゃなくてね、自分の記憶だけで街つくっちゃおうっていうさ、そういうことを始めようと思ったんだよね。実はさあ、体だなんだ、っていうのは後で気が付いた。で僕はあの作品作って一番気に入ったシーンっていうのは、素子が自分の体ぶっ壊すところ。戦車のハッチ開けようとして、体がぶちぶち千切れてくっていうさ。あそこが一番しびれた。自分の体を自分で壊してくっていう、自分の体を客体視してくことの快感みたいなさ、それはね、はっきり言って演出としてやろうと思ってた。個人的には、演出家として肉体の表現ってことを今までと違った視点でできないだろうかって、ロボットものではやってるんだよね。体がどんどん壊されてく、っていうさ。それでも最後まで戦っちゃうっていう表現してるわけだけど、もろに人間の体、しかも女の体でやってみようって。でも、作り終わってからだよね。あ、体ってのはもしかしたらテーマになるのかな、って思ったのは。

一番笑えたアメリカオタク事情記事

ゴルゴ13』って、アメリカじゃ黒人の間ですごく人気が高いんだ。ゴルゴ14っていう名前のラッパーがいるくらいなんだよ(笑)。

すばる 2006年 12月号 [雑誌]

すばる 2006年 12月号 [雑誌]

鼎談
少年達の一九六九 
高橋源一郎 矢作俊彦 内田樹

これを読んで何故kingfish.hatenablog.comかわかった。
最初は全共闘世代同士でゆるーく回顧してたのが、途中自衛隊の話になって雲行きが怪しくなる。当然内田は下の本のノリ、高橋もこの本に説得されちゃったんですよーってノリ。

9条どうでしょう

9条どうでしょう

矢作はあんたらがそんなヌルイこと言ってるから小林某がのさばるのであって、戦争は絶対起こるよ、だからちゃんと憲法で規定しておかないと自衛隊が暴走してしまうのだよとエキサイト。でも内田はまたあ矢作さんはそういうキャラだからとなあなあで流そうとして更に矢作が激怒。それなのにブログでは和気藹々でしたと内田が書いていたから、「ババア」で激怒したんだなあ。

矢作 あなたは間違っているよ。自衛隊に限らず日本人は法的にがんじがらめにしない限り危険ですよ。それなのに重武装した役人を統べる法律がザルなんだから。

矢作 そんなことを言っていたら自衛隊はいつまでたっても戦争できないよ。
高橋 させないようにするんですよ。
矢作 たまにしないとつまらないでしょう。何のための人生だ。
高橋 おいおい(笑)。そんなこと思っているのね。
矢作 えっ、思っていないの。
高橋 ぼくは思ってない。
矢作 ああ、そう。ふうん。
高橋 ほら。やっぱりそこが横浜の少年だ(笑)。

矢作 ぼくが言っているのは、このあいまいさを排除しないと、もう一回戦前と同じことが起こるということです,「美しい日本」国があったころでさえ起こった非道いことが、美しくない日本で起ったら目も当てられないでしょう。たとえばノモンハン事件ね。あれだってそうなんです。関東軍には交戦規定がない。法務官がいない。軍隊を法的に組織として統制するものがない。

矢作 ぼくがもし日本人であったらという前提で言うなら、間違いなく憲法を改正します。(略)
これこれこういう戦争をすると限定したうえで、自衛隊が戦争という仕事をできるようにする。その仕事をする上で、違法行為が起こらないような公開性と競争性を持たせる。行政改革と同じだよ。(略)
自衛隊は戦争をする役所ですよ。

で、ラストがこれ。

矢作 まあ、重要なのは最後まで好き嫌いを声を大にして言っていくことだね。
内田 だから、さっきの自衛隊のことも法律の問題じゃなくて、人の気に障ることを大きい声で言いたいんじゃないですか。
矢作 言ってろよ。そのうち、横で戦争が始まっちまうから。水色のシートの向こうで。ゴジラが来たときに、モスラに頼ってるとひどい目にあうぞ。

鼎談の中で矢作は神戸震災で印象に残ったエピソードとして、乞食同然の親子がホテルに現われて追い返されそうになってるところに支配人が「***様」と飛んできたというのを挙げている。
[矢作図式?]
金持ちが乞食同然着の身着のままで逃げ惑う瞬間が見たい。非日常が見たい。

ここらでひとつ戦争でもどうだい

そうなると自衛隊が暴走しないようにちゃんと規定しておかなきゃなあ。