ホッブズ その思想体系

 

ホッブズ―その思想体系

ホッブズ―その思想体系

前ノリティリポートやがなby松本人志

しかしながら、刑罰という問題において、為政者は、「過ぎ去った悪の大きさをみないで、来るべき善の大きさを顧慮」しなければならないとしたら、無実の者を「処罰する」ことも、ときには正しいということになりはしないか。たとえば、とくに重大な犯罪を犯した犯人が発見されないばあい、あるだれかに罪を着せて、厳格な「刑罰」を課し、それを広く人びとに知らせることは、他の人びとが同じような犯罪を犯すことを防止するという見地からすれば、正当なことになりはしないだろうか。

この疑問に対するホッブズの解答は、刑罰という問題は、実際にそれが生じたさいには功利主義的精神にもとづいて〔効果を顧慮して〕答えてしかるべきではあるが、しかし、これはそもそも法の違反について有罪である人間との関連においてしか生じないというものである。「なぜなら、処罰はただ法の違反に対してだけなされるのであり、それゆえ、無実の者に対する処罰はありえないからである」。

死刑執行の権利はどこから。

ナント、建前上はタイマン勝負だと。

ホッブズによれば、主権者はどこからもそのような権利を受けとりはしなかった。自然状態において、主権者は、他の人びとと同様に住人を殺す権利を有していた。そして、かれは、他の人びととは異なり、〔コモンウェルス設立ののちにも〕他の人びととは異なり、この権利をそのまま保持しつづけるというわけである。
(略)
したがって主権者と主権者が死刑を宣告した臣民とのあいだの関係は、自然状態における二人の敵対者間の関係に逆戻りする。ただ、〔コモンウェルスが設立された〕いまとなっては、一方がはるかに他方より強力になっている点だけが異なるのである。