プロレスファンという装置

プロレスファンという装置 (青弓社ライブラリー)

プロレスファンという装置 (青弓社ライブラリー)

読む気なかったのだけど、井上章一の文が保守厨房批判になっていたので借りる。
井上にはミスター高橋本なんて別に驚かなかったという知人もいるし、本人だってそれなりスレたプロレスファンであるが、それでも率直に驚いたと告白している。

多くの客は、「やってしまえ」「にげろ、もうすこしだ」などと、声をからしている。そんな場面で、私は思うのだ。今、目の前でやられている四の字がためは、痛め技じゃあない。休憩時間だ。(略)そう想像できる自分が、ちょっとかしこく思える。そこへ想いのいたらないまわりの観客が、おろかにうつる。オレの眼力も、ちょっとしたものだ。と、そう思いこみたくて、プロレス観戦へでかけたりもした。
(略)
団体関係者が、レスラーの演技力を値ぶみする。それと同じ視線を、私はキープしようとした。それで、経営側へ加担したような気になり、悦にいったりしていたものである。まるで、レスラーの給料を、会場のわかせぐあいから否定でもするように。
そう、私が会場へいくのは、レスリングを見るためではない。客の反応をたしかめるために、でむいていたのである。自分も、客でしかないのに、だ。
そこまで、自分を裏事情通だと買いかぶっていたのに、高橋本は私をおどろかせた。けっきょくは、何もわかっていなかったのだと言うしかない。私も、団体にあやつられるおろかな客でしかなかったのである。

まあ単にプロレス話なのですが、保守厨房批判というか、ネットに蔓延する他人事な物言い批判になっている(ようにも読める)。
自分も、客でしかないのに、だ。
何がどうだろうと騙されるのだけは、イヤなのだ。純情なプロレスファンがサヨクだ。で、それを見て、裏事情も知らないでと笑えば、自分はマヌケではないと、自分は「おろかな客」ではないと、自分はリコウでいられると思う。あげくには優越感にひたることが目的になる。だけれど、そんな甘いものではないぞ、お前だって所詮は客でしかないのだという話。
別に厨房だけに言ってるのじゃなくて、僕も噛みしめているわけですよ。
自分も、客でしかないのに、だ。
他の文章はもう、今更ねえという気分で飛ばし読み。
ちょっと面白いなと思ったのがコスプレレスラー広田さくら

広田がこのころ頻発していた技は、相手選手にキスをする「ときメモときめきメモリアル)」と数本の指を相手選手の肛門に突っ込む浣腸に似た技「ボ・ラギノール」だった。(略)二人のタッグ名が「ときめき☆ボ・ラギノール」になったことからもわかるように、お笑い路線で進んでいた

試合終了後D-FIXはリングに乱入して暴れたあと、「髪切りマッチ」の条件を確認しはじめる。広田は売られたけんかを買う形で無謀な条件をのんでしまうが、その後二人に向かって話しかける。「じゃあ、逆に、おまえらに問う」--観客はもちろんのこと選手も何を言うのだろうか、と固唾を呑む緊張の瞬間であった。「今度のK-1、ミルコとサップ、どっちが勝つと思う?」。

GAORAとかで滑ったトークを展開しているという認識しかなかったのだけれど、新人と対戦するに当たって、アイドルレスラーとしてデビューした自分自身をコスプレしたというのを読んで、 話としては、9月05日「ミルミキサー」だろうか。後日談あり。
3月15日「疲労」から笑える一部。

バラエティー売り場に行くと、おじさん2人がなにやら深刻な表情を浮かべて、かつらコーナーをさまよっていました。何気に近寄って会話を盗み聞きしてみると、2人は宴会のコスプレ材料を探しているようで「どんなだっけ?シャラポア…」と悩んでいました。私はしばらく見ていましたが、一向にかつらコーナーから動こうとしなかったので、飽きてその場を去りました。ポイントはヅラじゃなくて、乳首だと思うが、大丈夫だったのでしょうか、2人組。