現代イラン

黙々と音楽制作に取り組んでいるため、家に眠っていた新書をトイレ読書で消費することに。

現代イラン―神の国の変貌 (岩波新書 新赤版 (742))

現代イラン―神の国の変貌 (岩波新書 新赤版 (742))

ヴェールの利点(ムレるし、食事時は不潔だが)

普段着の上に地味な色のコートとヴェールを羽織るだけのビジネス・スタイルは、男性の視線ばかりか女性の視線からも解放される気楽さがある。「強制」されていることへの不満はあるものの、「隠す」ことの気楽さや便利さもそれなりに実感されている。西洋の女性が、「見せる」ことによって自己を表現してきた結果、常に「見られる」存在であることを強いられてきたのにたいして、イランの女性は「隠す」ことを強制された代わりに、「見られる」窮屈さから解放されたとみることもできる。

GIRIGIRIチャードルズ

女性たちは、スカーフとコートという規制のなかで生きてきて、それなりの使い分けによって自己主張をしてきた。許されるぎりぎりのところまで見せることで、その勇気と大胆さで周囲の視線を惹きつけようとする女性もいれば、隠すことの気楽さに慣れすぎてしまった女性たちもいる。今だにスカーフヘの違和感がなくならないという私の友人は、コートとスカーフのせいで、身だしなみに無頓着な女性が増えたと嘆く。(略)
女性たちは、「隠すこと」は、「見せること」でもあるという極意を体得し、そのなかにそれぞれの人生観と個性を表現してきたのである。

そんな時代もあったねと

西側諸国やイスラーム諸国は、イランの勝利でサッダーム政権が崩壊した場合に、イラク南部のシーア派がイランの支配下に入るという最悪のシナリオを恐れた。アメリカは1979年11月に発生したアメリカ大使館占拠事件以来、イランと断交状態にあったにもかかわらず、開戦当初は中立を宣言し、イランヘの武器売却にも寛大であった。しかし1982年以降、イランがイラク領に侵攻し、イラクが守勢に立たされるようになると態度を一変させた。西側諸国にイランヘの武器禁輸の徹底を呼びかける一方で、イラクには武器を積極的に売却した。
1986年に至って、アメリカが表向きにはイランヘの武器禁輸政策をとりながら、秘密裏にイランに武器を売却していたことが発覚する。レーガン政権を窮地に陥れたコントラ・ゲート事件である。