タイガー&ドラゴン「出来心」

「盗られたことにすればなんでもできる」(ここは虎ちゃんの猪木顔で)そんな落語の構造を利用して、ありえたかもしれない別の未来をつくる、いつもならそれでグワッと世界が広がるはずなのだが(しかもフランシーヌとか、これまでの展開も利用しているのに)、今回は全然来なくて、色々考えてみたけれどわからず。
才能がないなんて早合点するな。もしも落語がやれたなら(杉田かおるも80キロ)。でも既に確定した過去はあって、そこから若い世代が派生しているわけで。組長がマクラをやって、その後を虎児(長瀬智也)が引き継いで、サゲは組長の(花色木綿)を使う。泥棒の話を泥棒して、ヤクザの話をヤクザが。そうするには盗られたと嘘をついた方も出来心と言ってしまってはドリーミーじゃないので、「花色木綿」なのかなあ?
なぜ前回のような感動には至らないのか。それは宮藤官九郎内館牧子ワールドに挑戦して、そっちに神経を使いすぎてしまったせいではなかろうか。「汚れた舌」でいうと元同級生の巡査・金子準(高岡蒼佑)が 森口瑤子で、銀次郎(塚本高史)が牧瀬里穂みたいなもんですよ。当然クドカンワールドだから半端な凸凹コンビの珍騒動になってるけど、わざとホモ巣窟に行かせといて「えー、お前マジ行ったの。バカじゃねえの」と意地悪く言ったり、彼女自慢をあっさりスルーetc辺りに、内館ワールドがほんのり漂ってます。「許せない、何がニートよ。やりたいことが見つからなかろうが生活のためにしがない巡査をやらなきゃならない、あたしの気持ちがボンボンのあいつにわかるわけないわ。絶対酷い目にあわせてやる」。ニートというと困ってる親とか世間とか、悩んでる本人が語られるわけですが、働いてる同世代は語れないわけです。だってそれを言っちゃったら負けだから。ニコニコ笑って友達のふりをして話を合わせます。しがない巡査、しかも私服は(ダサイという仮定の)裏原ドラゴン。意地悪く描いてしまうとかなり浮かばれない設定の元同級生の巡査。コネなし資産なし才能なし夢もなし。そして多くの人間がそちら側なんですよおおお、ジェラシーなんですよおおお(ターザン山本)。
以下とりとめなく。
泥棒稼業とはなにか。警官になったら汚職とか、建設業なら談合ですね。一人前になるにはそれに染まらなきゃいけなくて、でも一旦露見したら極悪人にされてしまう。かと言って出来心でしたとは言えない言いたくない。それでドリーミーに花色木綿。もしも談合バレたなら、「花色木綿」で許して欲しい。池中玄太80億。
出来心が通用するのはアマチュアで、半端ものは一人前の顔して「ありorなし」なんて言ってないで、トラブルが起きたら「ちゃんと話のできる」大人の後にくっついて修行しろ。神保組もアマチュアでありました。

  • 脱線して「汚れた舌」について。

これ最初の二回くらいしか観てなくて、もちW直子はスキップ、森口瑤子の「エス目線」のみが楽しみ。直子を抱きかかえる旦那を牧瀬里穂が花畑から見つめる場面とかかなり笑撃的。ああいうのってクドカンワールドで出せない味わい。でもあんなドロドロした話、毎週見たくねえ。それにしても全国の社長さんは秘書ってあんなこと考えてるんだと(内館は元秘書)思うと震えが止まらないのでは。内館秘書は当然なしですが、森口瑤子の秘書なら、ありありありあり猪木アリ。

  • さらに脱線して

総合で頻出する「猪木アリ状態」という言葉。これってある意味、すごい。だって二人の人間のポジショニングを説明する言葉が、固有名詞を合体させた「猪木アリ」って、ああた。