アメリカは発明された

 

神の静的世界を破壊する新大陸

受容されていた宇宙のイメージは静態的で有限、完全で変更不可能というものであリ、その世界の中で人間は囚人として居住していた。しかし、なんと一人の人間が大洋を渡った。彼は世界の向う側まで行き、また戻ってきた。(略)
何世紀も受け入れられてきた諸理念を拒絶し、宇宙の構造やその現実の性質を構想し、人間と創造主との間の異なる種類の関係を考案し、そして宇宙における人間の居場所について新しい理念を発展させることが必要であった。(略)
アメリカの発明物語のより深い意味でもある。というのは、この物語は宇宙の囚人からの、つまり古来の隷従と無能力からの、人間解放の最初のエピソードだからである。それは自分自身を理解する古風な方法からの人間の解放であり、その果実は生まれるべくしてすでに収穫された。アメリカが自由と未来の生家として歴史的段階に登場するのも偶然の一致ではない。アメリカ人こそ、西洋文化の新しいアダムなのである。

黄金の希望は危険な夢へ

コロンブスのした約束は偽りの餌だったことが分かった。熟した果物のように手に入るはずだった黄金の希望は、苦汗と略奪を必要とする鉱山の投機的な未来にまで低下した。穏やかな気候と芳しい微風は、多くのキリスト教徒の生命を奪う悪疫をはらんでいた。悪魔のようなハリケーンが多くの船を難破させた。新植民地の生活を包んでいたはずの和合の夢は、憎悪・失政・不和に道を譲り、一方この空想的楽園の紳士的で無垢の先住民--キりスト教徒の友人と思われていた--はその野蛮さを発揮するようになった。(略)
この事業には深刻な不信が垂れ込めていった。多くの人々にとって、最終的にはスペインを破滅に導いてしまうような、気違いじみた危険な夢のように見えた。この邪悪は払拭しなければならなかった。そこでコロンブスは、彼特有の頑固さと信念に鼓舞されて、つらい仕事のために自らを奮い立たせた。
中傷にもかかわらず、スペイン国王は自らの政治的・宗教的威信が深く関わってしまった事柄から退却することは、不可能でないにしても、いまや困難になってしまっていた。(略)
国王の政策には一つの重要な変化が生じた。当初の有頂天の期待が消減してしまうと、公的独占体制--天がスペインに遣わしたもうたとされる宝物を独占しようという考えから樹立されたもの--は現実には資産どころか重荷となってしまった。探険・開発・植民はこうして最高入札者に開放されるようになった。

大陸だって「三」という数字の神秘に沿うはず。

世界の三分割はやがて聖アウグスティヌスに見られるように神秘的な概念となった。聖アウグスティヌスにとっては神の国の住人はヨーロッパやアジアやアフリカにしか見出だせない。海上にあるかもしれない他の球は、彼によれば、アダムの子孫が住んでいない以上、排除されなければならなかった。
教父たちによるこの神秘的な地理的概念はのちのキリスト教著作家たちに継承されていき、多彩な寓意的解釈により新たな支持を与えられていった。三位一体の神の地理的象徴をこの三分割の中に見た。その起源がノアの息子たちの間に地球を分配したことにある、と信じていた。生まれたばかりのイエスのもとへ表敬訪問した三人の賢者こそ世界の三つの部分を代表していた、と信じていた。そして、この分割の中に福音のいくつかの言葉と三という数字の神秘的な完全さの例証を見た。