楽器と身体・その2

前日より続いてます。 

楽器と身体―市民社会における女性の音楽活動
 

ほんとはフェミ話が中心なのですが、そこらへんはスルーでトリビア的に展開。

ムネに、アシに、ときめくオヤジ。

一人の女性がチェロを弾いている。その際、彼女は二つの好ましくない状態を回避することができない。一つは、高音部(駒の近く)を奏する時に、上体が前方へ傾きすぎて、胸が圧迫されることである。二つめは足の位置で、これは本来彼女が呼び覚ましてはならないようなイメージを多くの人びとに呼び覚ましてしまう。ワカルヒトニハコレデジュウブンダロウ〔原文ラテン語〕。

乗馬も横乗りかよ!

女性の足が与えるとされたエロティックな効果は、十八世紀から十九世紀にかけての時代、まさに強迫観念的な不安の中で排斥された。二十世紀初頭でさえ、足を開かなければならないような体操は、少女たちには固く禁じられていた。乗馬で女性用の横乗り鞍が廃止されたのは、ようやく第一次世界大戦後のことであった(競技の時も含めて!)。

フェ、フェミ、キタキタキタキタキタ━━━━━━(゜∀゜≡(゜∀゜≡゜∀゜)≡゜∀゜)━━━━━━!!!!!。まあそれが目的の本だからしょうがないけど。

女性は男性のまなざしによる支配に従順に従ってきたので、女性はそのまなざしの求めに応じて身体や振舞いを磨きあげるよう要求されてきた。それに対して男性のほうは、女性が見ることの自由を奪われるに任せてきたのをいいことに、女性たちのために、男性美や性的な魅力に磨きをかけようなどとは考えもしないできたのである。

独&墺の道路事情。高速道路は無料じゃねえ。

まったくもって…ひどい道だった。こんな道を通ると首の骨を折ったり馬車が砕けたりしかねない。舗装はがたがただし、さんざん車が通っても放置してある石の車道はすっかり傷んでいる。管理が悪くて危ない橋、街道筋のあちこちに、一瞬にして馬車を転覆させるような穴があいている。こういった状態を経験して、旅行者が不平を鳴らすのには、じゅうぶん理由がある。彼らはその父祖の代から長年にわたって、これらの道を整備するため、新しい橋を架けるため、橋のたもとの土地を固めるため、窪みを埋めたりならしたりするためという名目で、関税やさまざまな代金、それに、道路料、橋料、護衛料と称する種々の料金を支払ってこなければならなかったのだから。それでいて、何の恩恵も受けていないのだ。

19世紀の神童はラッパーの如くスキャンダラス

近年、とりわけ音楽の分野において、神童と呼ばれる子どもたちが、雨後の筍のように一夜のうちに数限りなく出てきた。十三歳を超えていると、すでにセンセーションを巻きおこすには年を取りすぎている。それでもなお、いくらか人びとの注目を集めたいと考えるなら、何か人並みはずれたことをやってみせなければならない。神童になる機会を逃した以上、下手なヴァイオリンをキイキイ弾くよりも、かつて人を殺したことがある、あるいは殺しの嫌疑をかけられて、監獄にいるあいだにヴァイオリンを弾きはじめたとでもいって、売りださなければセンセーションにはならない[どうやらバガニー二のことをいっている]。あるいは、弦が一本きりしかない、もっといいのはそもそも弦が一本もないヴァイオリンを演奏したとか、ヴァイオリンの駒を弓で弾いて音楽を奏でたという伝説でも作りださなければならない。

ナポレオン制圧下のドイツ。ロシア遠征失敗を機に「ドイツ国民」を旗印とする熱狂が沸き起こる。その義勇軍の中に男装して参加した女性の弟への手紙。

愛する弟よ!
今日はあなたにまったく新しいことをお知らせしましょう。でも、その前に怒らないって約束してください。実は私は四週間前から兵士なの!驚かないで。だからといって、咎めだてもしないで。あなたは知っているでしょう、すでに戦争が始まったときからこの決断が私の心を支配していたことを。もう二人の女友だちから手紙をもらったけれど、二人とも私のことを卑怯だっていって非難するの。この名誉あふれる戦争に参加するという決心を、私が誰にも言わずにすべてひとりで決めてしまったからなんですって。(略)

女性兵士の最後の姿

「レンツ」と名乗ったその女性兵士の最後の姿を戦友が日記に残していた。ざっくりした描写がなんとなく、スターシップ・トゥルーパーズっぽくなくない。

幸いなことに施術が無事終了した時、私は自分の腕の骨が大丈夫かどうかを試してみたくて、太鼓を叩いてみた。しかしあまりうまくできなかった。この時、兵士レンツが私の手から太鼓をとり、実に巧みに連打した。「君は何でもできるんだな」と、ひとりが彼に向かって言った。「君は誰よりもうまく、服を仕立て、料理し、洗濯し、歌い、銃を撃つ。そのうえ太鼓叩きでもあったんだ!」「ポツダムの兵士の子どもは何でもできなきゃならないんだ」、とレンツは言い、楽しげに太鼓を叩き続け、歌った。「さあ来い、さあ来い、与太者どもよ。隊長殿のところに行かなきゃならねえ。」(略)
この時私ははじめて、大勢の人びとがひしめきあっているところに撃ちこまれた大量の榴弾のもつ恐ろしい効果を知った。それは空から降ってきて爆発し、あちこちに飛び散った。悲痛の叫びと鬨の声が入り混じり、互いが互いの叫びをかき消しあっていた。しかし、私の勇敢なレンツは少しずつ前進を続け、嵐のように太鼓を連打した。散り散りになった人びとは電光石火のごとくふたたびひとつにまとまった。もはや勇敢な突撃あるのみであった。われわれは、彼らの発射する弾丸がわれわれの頭上を飛び越えていくほど間近まで、敵の砲兵中隊に接近した。その時、敵の第二陣の銃がわれわれの列に撃ちこまれ、銃弾が雨あられのごとく降りそそいだ。われわれの勇敢な太鼓叩きが、私のそばに崩れ落ちた。彼は身体を引きつらせながら私のコートの端をしっかりとつかみ、悲痛な声で叫んだ。「少尉殿、私は女なんです!」(略)
彼の身体を締めつけていた軍服の胸元が開かれた。雪のように白い胸が激しく波打ち、この人物が処女にして英雄の心臓をもつことを明かしていた。彼女の口からは一言の嘆きも聞かれなかった・・・。