封印作品の謎

前回の続きがまだまとまらないので、こっちを先に。

封印作品の謎

封印作品の謎

例のセブンの欠番12話について。
ケロイド型宇宙人を考案したのは実相寺監督。
幼少時の火傷で左手に障害があった成田享はその注文に対して妻に『困ったもんだ。ケロイド状のものを子供番組向けの怪獣に作らないといけないのか』と語っていた。
実相寺の話。

色が全部出ちゃったような青白さを出したかったんだよ。血管が浮き出ているようなね。ジャミラとは違って、乾燥してない体が透けていて、白血球と赤血球のせめぎ合うイメージで。

大伴昌司が考案し、当時中学生だった竹内博が継承した「被爆星人」という名称を円谷プロがメディア配布設定資料に採用した。糾弾が起った70年はキャラクタービジネス始動させようとしていた矢先のことで、円谷は欠番にした。
興味深いのが糾弾の口火を切った中島という人の話。

「毎年、毎年、被爆者をひな壇に上げるために、よりひどい被爆者を探していくわけですよ。片っぽでは悲惨さを強調しなくちゃいけないでしょう」

被爆の悲惨さを伝えるには被爆者の酷い状態をさらさなければならず、そうすることは一方で被爆者への差別を生むというジレンマを原水禁運動の中で糾弾者の中島自身が感じていたのだ。つまり普段めったに抗議の投書などしなかった穏当な彼が過剰反応したのは、反核の意図でケロイド状の宇宙人という悲惨さを強調したことに、自分達と同様の矛盾を見たせいだったのだ。
「東京原爆被爆二世の会」の代表の主張はこうだ。「自分たちが作って誇りがあるんだったら、誇りある対応をすればいいのに、自分たちで貶めちゃった。自分たちが映像作品で掲げた高邁な理想を自ら否定したんです。それは糾弾の対象に当然なります。糾弾されたのはその差別性じゃないんです。商業主義で、怪獣のキャラクターとして被爆者を利用したことなんです」
前日の絡みで『死者と他者』から引用。

「死者たちの遺言執行人」たちは「死者の名において」私には告発権が委任されているというかたちで正義を要請する。そしてそのようなことばづかいでしか死者について言及が果たされないというのがほんとうならば、世界ではこれからあとも、報復の暴力が連鎖し、人が殺され続け、「今ここで行われるテロル」の正当性を証言するために死者たちの骸は墓場から掘り起こされ続け、「死ねない死者」たちが間主観性という名の「煉獄」にひしめくことになるだろう。
だからこそ、レヴィナスは死者たちについて、それとは違う仕方で語る方法を探求したのである。
それは、世俗の「審問の思想家」たちがしているように、「死者たちの名」において有責者を正義の法廷に召喚することではない。あるいは、生き残った人々に反省を促すために、死者たちの悲惨な死に方を詳細に報告することでもない。

有名なブラックジャック「死に水」掲載も当時の編集者の口から語られるとしみじみ。
初登場の表紙には小さい題字のみ。

「確かにあの表紙は寂しいよなー。もう、本当にひどい扱いしたもんだよ。(略)編集長が「手塚の死に水は俺が取る。最後だけつきあおう」って、僕に言ったものだからね。それで「5、6回ならつきあうよ」ってことで掲載したんだ。出だしの状況は最低だったよ。だから、あれは何回か掲載して終わり。「ありがとう、ご苦労様でした」っていうのが趣旨だったんだ」(略)
何より大きかったのは、「ブラックジャック」のおかげで「チャンピオン」に女性読者がついたことです。女性人気はすごかった。