軽い帝国*1―
ボスニア、コソボ、アフガニスタンにおける国家建設
- 作者: マイケル・イグナティエフ,中山俊宏
- 出版社/メーカー: 風行社
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: 単行本
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この力の真空を埋めるのは、本来はアフガニスタンという国家であるべきだが、実態はドスタムやアタが率いる軍閥がそれを埋めている。彼らは、国家建設を妨げる最大の要因である。
しかし、それは彼らが封建社会の遺物であったり、制服を着ただけの昔からいる無法者であるからではない。それは、マザリシャリフで交渉にのぞむ軍閥が、中央アジアにおけるアメリカとソ連の勢力圏争いから派生した、近代後期の産物であるからだ。
今日、アメリカが勝利をおさめた結果、それぞれの軍閥は英語を流暢に話すプレス担当者を抱えており、彼らは海外メディアとのインタビューに忙しい。
彼らは現地の支持者の獲得にも余念がない。ドスタムは、自分の地方テレビ局をもっており、そのカメラマンたちは、彼の姿を夜のニュースで放映すべく、中庭で待機している。彼らの力は主として武力に依存しているが、彼らは自らをビジネスマン、徴税者、部族の代表、そして氏族の指導者であると見なしている。(略)
国際赤十字の支援によって、収容者たちの健康状態がどうにか回復すると、善意の将軍は和解の象徴として収容者たちをパキスタンに帰還させた。このようにして有力な軍閥指導者たちは、アフガニスタンにおいて政治的なゲームに従事していた*2。
ドスタムは最新の衛星電話スラーヤを使って電話をかけている。彼は政治家になろうとしている。それゆえに、彼は白いシャツとスラックスを身にまとい、民間人のような服装をしている。アタ導師は、明るいグレーのスーツを着ており、システム手帳を手にしている。(略)
ここアフガニスタンにおいて畏怖の念は、アメリカのプレゼンスの規模によってではなく、アメリカの空軍力の時間的な正確さと破壊力によって保たれている。軍閥指導者たちは、タリバンが攻撃される様を見て、これが自分たちにも起こりうることをよく理解した。目下のところ、これが平和を保っている。