太平洋戦争時、アメリカは日本をどう見たか?

敵国日本―太平洋戦争時、アメリカは日本をどう見たか? (刀水歴史全書)

敵国日本―太平洋戦争時、アメリカは日本をどう見たか? (刀水歴史全書)

タイムズ特派員(1914-1922日本在住)の著書。1942発刊。

この点*1については、先の大戦後のドイツで経験したことを思いだせば、われわれの迷いは覚める。ドイツで戦後の反動が台頭した時、自分たちの苦しみは、戦争そのものがもたらしたものではなく、リベラル派が署名した不公平な平和条約から生じたものだという説得は、何百万ものドイツ人たちには、たやすく納得できることであった。
(略)
 われわれは内政干渉という印象を相手に与える行為は厳に慎むべきである。もし文民が停戦条約にいかなる責任をとることをも拒否するなら、それは、われわれにとっても、日本の将来にとっても、よりよいことであるかもしれない。彼らが拒否することは、戦争責任を否認し、東条大将もしくは、だれか他の軍部の代理人が罪の重荷を担わねばならないということを意味することになるからである。
 連合国の勝利のあかつきに、われわれがもし文民の政府を要求すれば、軍国主義者たちは黙ってそれを受け入れ、内心それを喜ぶであろう。その結果、その政府は二十四時間以内に用意されよう。だが日本人はだれも、こんなことにだまされはしない。だまされているのはわれわれの方なのである。というのは、われわれの中には、政府の変革は政治構造の変化であると考える者がいるかもしれないからだ。しかし、これは建物でいえば、その正面をかえることにすら相当しない。ただ、ペンキを塗り直した程度のことなのである。

ほんの数年前に、日本は世界の綿花取引で、英国からその首位の座を奪った。これは決して日本が軍隊をアメリカ南部の諸州に派遣したからでもなければ、重要資源を押さえる支配権をえたからでもない。ポケットに信用状を入れて綿花市場に乗り込んだ日本人バイヤーがやり遂げただけのことなのである。

*1:和平交渉は軍部ではなく戦争に責任のない文民とという提案