元祖アイドル小説

遠くから見ても、彼の靴はなんだかいやらしかった。
ハイウェーの両脇に広がる丘の上では、
大きな鳥たちが頑丈なくちばしを地面に突き刺していた。
花瓶が一本もないんだ。妻が全部もっていってしまったんだよ。
プロジェクトはなにひとつ具体化していないようだった。
そんなに死にたいのなら首を吊ればいい。
私は男たちを、まだ生きている彼らを見つめた。
  
やり方を教えてあげれば、
きっとそれなりのクレープができるはずだけど、
彼女はなにも訊かず、私もなにも言わない。
沈黙だけが苦しげにあえいでいる。